なんとか褒め殺される寸前で晩餐会が終わり、フレッドは皇帝陛下に呼ばれてそのまま陛下と執務室へと向かった。
 話が終わったら戻ると言っていたのに、二時間後には今夜は部屋に戻れないと知らせが来た。

 フレッドに出会ってから初めてひとりで眠りについたけれど、漠然とした不安に襲われて熟睡はできなかった。その不安はフレッドがいないからなのか、戻れないほどの大問題が起きたからなのか、私には判断できなかった。



「ユーリ、昨夜はすまなかった」

 翌朝、朝食の前に戻ってきたフレッドが開口一番に謝罪してきた。

「皇帝陛下とのお話だったら仕方ないわ。どんなお話だったの?」

 いつもの調子でフレッドに問いかけるけれど、眉間に皺を寄せてすまなそうに言葉を続ける。

「ユーリ、すまない。今はまだ話せないんだ。時期が来たら必ず話すから、もう少し待ってくれないか?」
「そう、まあ、帝国にかかわることなら仕方ないわね。機密もあるでしょうし」
「……すまない」

 皇帝陛下と皇太子の会話だから、隣国の公爵令嬢でしかない自分に話せないこともあるだろう。しかも昨夜はここへ来れないほど遅い時間まで話していたようだし、なにか重大な内容だったのはわかる。

 でもどうしてか、胸にモヤモヤが溜まってスッキリしない。まるで浮気男が悩み相談だと言って若い女の子のもとへ行く時のような感覚だ。