「え? イリスじゃなくて、聖女?」
「うん、間違いなく聖女へレーナよ」

 どういうことだろう? イリスとクリストファーの出会ってから、物語は始まるのではないのか?

「聖女とは……ミカエラが前に話していた物語の女だな?」
「そうなの。本来だったらバスティア王国に現れるはずなのに、リンフォード帝国に出現するなんて……物語が大きく変わっているわ」
「聖女がリンフィード帝国に現れるのは、そんなに大変なことなの?」

 物語についてはざっくりとしか覚えていない。聖女が敵だとはわかっているけれど、どう危険なのかもわからない。

「聖女は邪神を崇めていた今はなきハウゼン王国の末裔なの。闇の力を操って邪神の復活をさせる存在だけど、邪教を崇める教団を叩き潰したから、出てこないと思っていたのに……」
「ああ、テネブリス教団だな。俺が壊滅させたから間違いない」
「そうすれば聖女を倒すためにクリストファーとイリスが協力することもないから、万が一お姉ちゃんが婚約者のままでも安全だと思ったのよ」
「ミカエラ殿下……そんなに前から前世を思い出していたのね」