「ユーリ様! ユーリ様! お気を確かにしてください!」
「主治医はまだなの!? ユーリ、今医者を呼んでいるから、もう少しだけ耐えるのよ」

 泣きそうな若い女の子の声と、私の手を握るひんやりとした細い指。重だるくて寒さに震える身体。朦朧とする頭で考えた。

 うっさいなあ……ていうか、なんで朝っぱらからこんなに人がいるの? はあ、それにしてもクラクラして起きられない。昨日間違いなく飲み過ぎたわー……って、今何時!? 遅刻する!!

 ぱちっと目を開くと、見たことのない景色が飛び込んできた。
 心配そうに私を覗き込む紫の瞳。メイド服を着た十代後半くらいの女の子。天井には天使とお姫様が戯れる絵。やけに凝った模様の壁紙。私の部屋じゃない。

 私の部屋は真っ白な壁だ。しかもおかしなことに、経験したことのない記憶が、頭の中を流れていく。

 目の前の紫の瞳の女の人はいつも優しく微笑んで、このメイド服の女の子もニコニコしながらたくさん話しかけてくれていた。
 ——違う、違う違う違う。女の人はお母様で女の子はモニカという名前の専属メイドだ。