それからわたしが記憶を取り戻したのは、毒を盛られてなんとか一命を取り留め目覚めた時だ。一気に美華の記憶が蘇って、しばらくは部屋から出られなかった。わたしはモブキャラの帝国皇女だから、物語にあまり影響力がない。大好きな物語に転生した喜びもあったけど、ある可能性に気が付いた。

 でも、わたしが転生したならお姉ちゃんも、もしかしたら……!

 わたしの願いを神様が聞き入れてくれたなら、きっとお姉ちゃんもこの世界にいるはずだと根拠もなく探し始めた。だけどいくら探してもお姉ちゃんらしき人は見つからない。

 あきらめかけた、その時、とあるご令嬢が最近人気だという化粧品を献上してきた。
 この世界の化粧品は質が悪くてあまりよくない。今回もそうだろうと思ったけれど、小瓶がかわいらしくて手の甲に垂らしてみた。

 ふわりと香る自然の花の匂い。肌に染み込んでいくような使い心地。うっすらとピンクに色づいた液体。

 これは、お姉ちゃんが作っていた化粧品だ!
 節約のためとか言って、いつも手作りしていた。わたしも分けてもらって愛用していたから間違いない。これはお姉ちゃんが作った物だ!!