どこをどう曲ったか覚えきれないほど、皇城の奥まで進みある扉の前で立ち止まった。純白の扉には薔薇の花が飾り彫されて、持ち手は金でできており繊細な模様が美しい。場所から考えてもやんごとなきお方のお部屋であることは間違いない。

「入るぞ」

 短く声を掛けて、純白の扉を押し開く。部屋にツカツカと進んでいくフレッドは私の手を握ったまま離してくれない。

 部屋の中は白で統一された家具が配置され、当然のように細やかな細工が施されている。鼻腔をくすぐる香りは、どこか懐かしくて切ない気持ちになった。

 この香り……どこかで……。

「ミカエラ」

 フレッドが声をかけた相手は、やはり皇族。帝国の皇女であるミカエラ殿下だった。
 ミカエラ殿下は絹糸のような銀髪を背中に流し、ぱっちりとした二重の瞳は目の覚めるような鮮やかな青だ。小ぶりの鼻と薄く色づいた唇がかわいらしい。

 しかもフレッドが皇女様を呼び捨てにするということは——