会場に戻ると、デビュタントの白いドレスを着た令嬢たちがクルクルとダンスホールで回っていた。先ほど休憩室へ連れ込んだ女も視界に入ったが、もう興味も湧かなかった。

 王族席にいるはずの父上へ向かって真っ直ぐに足を進めていく。王族席には父上の隣に私の席もあり、ゆったりと構える父の隣に腰を下ろした。

「父上。少し確認したいことがあります」
「うん? なんだ。このようなめでたい夜会に似合わん形相だな」
「私が……ユーリエスと婚約解消したというのは本当ですか?」

 私が尋ねると父上は面倒そうな表情になり、視線を逸らした。

「ああ、間違いない。なんでもお前に近づいた令嬢を排除したと自ら退いたのだ。まあ、懸命な判断であったな。見た目だけはよかったから惜しい気持ちもわかるが、それだけで王太子妃にすることはできん」
「なぜ……私に相談もなく……!」
「なにを言っておる。二度も呼び出したのに、応じなかったのはお前であろう。次の相手探しもあるから私が承諾したのだ」
「そんなもの、用件を書いてくださればすぐに伺いました」
「はあ、もうこの話は終わりだ。ほら、次の婚約者でも選んでまいれ」