フレッドが紙袋から出してきたのはチョココロネだ。私は嬉しくなって飛び起きた。
 私と美華の思い出の詰まった菓子パン。どこにでも売っている、安くて甘くて、幸せが詰まったパンだ。

「チョココロネ!」
「ああ、一緒に食べよう」

 フレッドはヤドカリみたいな渦巻き状のパンを半分にちぎって、私にチョコクリームの多い方を手渡す。

「いつも頑張ってるから、ユーリはこっちだ」
『お姉ちゃんは、いつもお仕事頑張ってるから!』

 フレッドの優しい眼差しと、美華のひまわりみたいな笑顔が重なった。そこで唐突に気が付く。

 ああ、前世で愛されなかったと思っていたけど、私はちゃんと愛されていた。
 私が美華を愛したように、美華も私を愛してくれていたんだ。

 誰よりも近くにいて、いつも笑顔で、お姉ちゃんって寄り添ってくれていた。この世界に来ても、美華はずっと私を想っていてくれた。
 なんで気が付かなかったんだろう。どうして私ばかり与えていると思っていたんだろう。
 お父さんもお母さんも事故で亡くなる前は、ちゃんと私を愛してくれていたのに。

 瞳からポロリとこぼれた雫が足を濡らしていく。一度決壊した涙腺はなかなか止まらなくて、突然涙をこぼした私にフレッドが慌てていた。