レイチェル様は化粧水を取り出して、白くきめ細やかな左手の甲に数滴垂らした。ほんのりピンクに色づいている化粧水を丹念に塗り込むと、驚きに両目を見開いた。

「まあ! まあ! すごいですわ! この化粧水をつけただけですのに、この潤いとサラサラ感! これは……売れますわ!!」
「え? 売れますか?」
「ええ、それも大ヒット間違いなしです!! ユーリエス様、殿方などどうでもよろしいので、これを商品にいたしましょう!!」

 まさかそう来るとは思わなかった。そういえば侯爵家は大商会を営んでいて商品の目利きは厳しい。その家門のレイチェル様のお墨付きなら、将来性もあるだろう。それに最悪の場合、公爵家と縁を切っても商売をしていれば生きていけそうだ。

 どのように自活していくか悩んでいたけれど、やっとやるべきことが決まった。そうなれば善は急げ。早急に商売として立ち上げて、安定した稼ぎを得られるようにしなければ。