悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。

 イリス様が綺麗なカーテシーを披露すると、コンラッド辺境伯からソファーへかけるように促される。フレッドはイリス様を目の前にしても、特に変わった様子はないようだ。ホッとして胸を撫で下ろした。
 すぐにメイドがお茶を用意してくれて、人払いが済んでから話を始める。

「こちらがお手紙にございました、代々伝わる聖剣です。現在の所有者はコンラッド辺境伯の嫡子であるわたしです」

 純白の鞘にはびっちりと金色の古代文字が刻み込まれ、柄にはイリス様の瞳のような琥珀が嵌め込まれている。繊細な模様に覆われた持ち手の部分も琥珀が等間隔で配置され、まるで芸術品のような美しさだ。

「これが聖剣……ですが、こんなに簡単に用意してくださるとは思っていませんでした」
「実は聖剣は確かに本物なのですが、使いこなせる者がもう二百年も現れていないのです」

 イリス様は悲しそうに寂しそうに言った。次にコンラッド辺境伯が言葉を続ける。