「父上の影が動いていないな」
「はい、皇帝陛下からはなにも指示がなかったと言っています」
「本当だわ……お父様はなにか策があるのかな……?」
「玉座の後ろに檻があるなら、逆に聖女を見張っているみたいね」

 私の発言でフレッドとミカが顔を見合わせる。そんなに変なことを言っただろうか。

「さすがユーリだ。惚れ直したよ」
「え? なんで?」
「お姉ちゃんって、本当に最高!」
「う、うん? ありがとう……? ねえ、それよりも闇の力ってどんなものなの?」

 私の問いかけにミカが答えてくれる。フレッドも知らなかったようで、真剣に耳を傾けていた。

「闇の力はね、確か世界中から集まった汚れなの。聖女はこの世界を清めると穢れが溜まるから、通常は神に祈りを捧げて浄化させるんだけど、原作ではあえて浄化させないで邪神の復活に使ったの」
「なるほど……聖女の性格なら真面目に神に祈りを捧げたか疑問だな」
「確かに、前世でも勤勉ではなかったから……変わってないなら十分あり得るわ」

 それならその穢れを浄化させれば、闇の力はなくなって事態を収められる。
 わずかな希望の光は、私の進むべき道を真っ直ぐに照らしていた。