悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。

「待って、ヒールじゃ走れないから脱ぐわ」
「それではユーリの足が傷だらけになるだろう」
「大丈夫よ、布を巻けば平らな床だし問題ないから」

 そう言って、ドレスについているフリルを手で引きちぎって手早く足に巻きつけた。

「これでいいわ、私も走るから急ぎましょう」
「本当にユーリは……どこまで俺を惚れさせるんだ?」
「もう、そういうのは後で!」
「では後でたっぷり愛を囁こう」

 フレッドのとろけるような微笑みに、走る前から心臓がバクバクしてしまった。
 それでもなんとか入り組んだ避難経路を駆け抜けて、リンクの用意した隠れ家へと逃げ切った。隠れ家はあるアパートの一室で部屋数はキッチンと居間がひと間続きで、部屋がふた部屋ある。

 私たちが着いてしばらくしてからミカエラも影のマリサと一緒にやってきた。マリサはミカエラと背格好も似ていて、それこそ影武者にもなれそうだ。

「お姉ちゃん! よかった、お兄様も……」
「ミカ! よかった、逃げられたのね」

 ミカのドレスの裾は泥まみれになっているけど、無事な様子に安堵する。お互いを確かめるように抱きしめ合った。