共犯契約〜ヤクザの跡取りに魅入られて〜




 私は脂汗をかきながら瞼を開く。すると、男の腕を掴む人間の姿が見えた。
 見るからに喧嘩慣れしている男を片手一本で抑え、こちらを振り返った男の容姿を見た瞬間、私は息を呑む。

 地毛なのか、光の反射する一切の痛みの感じさせられない艶やかな黒髪、猫のような大きな目が特徴的な、モデルのように凛とした美しい顔立ち。身長も屈強な男が見上げる程高く、美丈夫という言葉が似合う。
 その男は、私を視界に収めると何故か頬を染め、うっとりと唇を開く。

「どうする?」
「…………ぇ」
「こいつ、どうしたい? お前の望みを叶えてあげる。そんなに傷付けられたんだ、それ相応の罰をこの男に与えてあげるよ」

 どうしたい?
 一体これがどんな状況なのかも理解出来ず固まる私を他所に、屈強な男が先程までの威勢を失い顔色を真っ白にして懇願し出す。美丈夫はそれに対し大きく舌打ちをした。