最悪。パスケースは返してもらえないし、きっとこのまま酷い事をされる。
なんで私がこんな目に? 高望みしたから? お姉ちゃんみたいになりたいって思ったから?
心の奥底から恐怖の他に怒りが沸々と湧き出て止まらなくなる。そして気づけば私は、品定めするように私を見ていた男に向け、唾を吐いていた。
こんな男に好き勝手されるくらいなら、私はもう──。
「は!? な、何すんだっ……」
「放してっ!! アンタみたいな気持ち悪い奴に触られるなら、まだ殴られた方がマシ!!」
次の瞬間、私の身体は地面に落とされ酷い衝撃を受ける。腹を蹴られたのだと理解し、鋭い痛みに身を捩らせ必死に耐える。ひゅうひゅうと喉が鳴り、呼吸が苦しい。
吐き気が襲ってきて、男が怒りに任せ何かを叫んでいるがそれが遠く聞こえる。そして振りかぶった拳が見えて目を閉じたのに、一向にそれは降ってこなかった。



