「あ」
「………………なんだァ?」
気付くと私は床に這い蹲り、パスケースを取り戻そうと男の足首を掴んでいた。
自分でも馬鹿なことをしているのは理解している。この先の学校生活の事を考えると絶対にやめた方がいいのに、どうしてもこれだけは諦めきれなかった。
「ど、どいてください」
「は?」
「わ、わ、私のパスケース踏んでます、だからっ」
「………………へえ、今年女が入学したって本当なんだな」
「ひ、ぎゃあっ!! やめてくださいっ……足の下のそれっ、返してっ……!!」
「何のこと? 聞こえねーよ」
男は足を退けずわざとパスケースを踏みつけると、下品な笑みを浮かべ、私の首根っこを掴み持ち上げた。
「地味だけど、遊ぶにはちょうど良さそうだな」
私はあまりの恐怖に色気のない悲鳴を上げ、足をバタつかせる。野次馬まで集まってきて見せ物状態だ。



