瞬時に理解することは出来なかったが、私の真横に人がぶん投げられ、背中から下駄箱に叩きつけられたらしい。
チラリと横を向くと原型を留めていないほど顔面がぼこぼこに腫れた男が痛みに呻きながら床に崩れ落ちていた。
「オイ、このくらいで落とし前付けられたと思ってるんじゃねーぞコラ」
そしてそれを見下ろす瞳孔が開き切り頬に返り血が飛び散った屈強な不良。そしてそれを真横で真っ青になりながら見つめる私。
屈強な不良は興奮状態にあるようで、息も絶え絶え、ボロ雑巾みたいになった男を蹴り続ける。
早急に気配を消し逃げなくては。そう思い、そろりそろりと足を踏み出した瞬間、私はある事に気付いてしまった。
暴力を振い続ける男の足の下に、お姉ちゃんから貰ったパスケースがあった。お姉ちゃんが、オーダーメイドでわざわざ私の為に作ってくれたそれは、ずっと私の心を支えていた。



