そして突然私を抱き上げ、大切な物を抱くように胸にぎゅうっとしまい込んだ。香水と煙の混じった濃い匂いがした。
「いいよ、この先全部お前の望みは叶えてあげる。その代わり、これから俺達は末長く、誰よりも深い仲で繋がるんだ」
遙は私に汚れたパスケースを握らせると、美しい顔をこちらに寄せ、自分勝手に唇を重ねてきた。私は抵抗する術なくそれを受け入れ、そのまま意識を落とす。
数時間後目を覚まし、保健室で私にピッタリと寄り添い寝転がっていた遙から教えられたことだが、遙は代々続く極道の本家血筋、指定暴力団天宮組組長の一人息子で、たまたま下駄箱で絡まれる私を見て傍観していたが、唾を吐きかける姿に一目惚れをしたらしい。



