「客が納得しているから文句は言わんが、お前さんは住みたいと思うか?」
「……」
「そういうことだ。で?」
「慎さんに依頼がいくので頼めますか?」
「ああ。正直な、長年この仕事をしてきて、納得のいかない現場が多かったが、俺は大工であって建築士ではない。嫌でもその通りに仕事をしてきた。もちろん違法な建築は断るが……。優ちゃんと出会ってな、現場が楽しいんだ。引退ももう少し先だなと思えるぐらいにな」

 慎の積み重ねて来た職人人生を覆すほどの優の存在――。

 瑛斗が優に惹かれるのも無理はない。

「慎さんにはまだまだ頑張ってもらわないと」
「そうだな。瑛斗が優ちゃんをものにするまでは頑張らないとな」
「なっ!?」

 小さい頃から瑛斗を知っている慎には、瑛斗の気持ちはばればれだ。