もちろん専務としての仕事もこなすが、現場の人手が足りないと聞くと自らが助っ人に行ってしまう。

 一級建築士の資格を持ち手先が器用な瑛斗は、現場でも評判だ。幼い頃から祖父の姿をずっと見てきたのだ。祖父のようにどんな立場になっても現場で仕事をしたいと思っている。

 仕事一筋で曲がったことの大嫌いな瑛斗は、かなりのイケメンで望んでいないにも関わらず、女性が寄ってくる。

 本社勤務の女性からは、副社長派か専務派かと度々話題にされるほどだ。

 副社長である兄は、色が白くスラッとしたイケメンだが、瑛斗は現場に出ることも多く日焼けした肌に程よくついた筋肉が魅力的だ。

 ただ、見た目で近づいてくる女性には、全く興味を示さない。現場で職人達に囲まれている方が、気が楽でいいのだ。

 この日は、リノベーションの現場の大工がひとり突然辞めてしまい、急遽現場に向かったのだ――。