訪れた最上階の部屋は、一面ガラス張りの最高のロケーションと、だだっ広い空間が広がる。最低限の柱があるだけの空間は、無機質で寂しい。

「贅沢な広さですね」
「そうですね。特に、まだ何もないですからね。自由に見て回って下さい」
「はい」

 メジャーを片手に、優は何かを真剣に考えている。

「小さいお子さんがいらっしゃるとは聞いたんですが、家族構成とかはご存知ですか?」
「ご夫婦とお子さんが三人とは聞いていますが……。詳しくは、打ち合わせの際に」
「そうですね。ここに住まわれるくらいだから、来客なども多そうですよね」
「本社を隣のオフィスビルに移転いただく企業の社長様なので、出入りが多いかもしれませんね」

 広いリビングに、寝室、子供部屋を作っても、客室も余裕で作れそうだ。

「どうですか?引き受けていただけますか?」
「正直、わくわくします」
「じゃあ?」
「よろしくお願いします」

 こうして、優が大橋建設の物件を担当することとなった。