「そうですか。それはありがとうございます」
「それでだ」

 瑛斗が呼び出されたのは、マンションの内装についてだった。まだ建設段階のマンションの最上階は、何もかもお客様の要望を聞いてプランを立てているのだ。

 ところが、大橋建設のプランナーが、何パターンか提示するも、いまいちピンと来ないと家族が難色を示しているのだ。

 話を聞くとプランはどれもオシャレなのだが、生活感がなさ過ぎるようだ。瑛斗が実際間取りを見ると、やたらと広いリビングダイニングになっている。他も、モデルルームかと思うほど、見た目重視の生活感を感じさせないプランの数々だ。

「……。これは酷い」

 高級マンションの最上階にとらわれ過ぎているのだ。

「うちは、まだ小さい子供もいますし、モデルルームのような空間は求めていないんです。何度かプランナーの方にもお伝えはしているのですが、あまり……」
「「すみません」」

 より良い空間を提供する側が、お客様の希望を全く理解していない。