「はい」
「瑛斗、すぐに来てくれないか？」
「なんだ？切羽詰まった声で」
「いいからすぐに来てくれ」

　電話の主は、兄である副社長だ。同じフロアで、普段は用事があれば自らやって来る。内線で呼び出されるなんて、嫌な予感しかしない。

　珍しい呼び出しに、すぐに副社長室に向かった。

『コンコン』

「はい。入ってくれ」

　扉を開けて中に入ると、部屋の中は兄だけではなかった。

「失礼します……」

　来客の存在を知らされておらず、戸惑いながらも兄の横に座った。

「こちら、木島商事の社長の木島さん」
「木島です」
「初めまして、大橋瑛斗です」
「木島さんには、今うちが港区に建てているマンションの最上階を購入いただいてる」
「それはありがとうございます」
「立地もいいし、本格的に住まいを移そうと思っているんです」
「失礼ですが、今のお住まいは？」
「横浜なんですが、本社を横浜から移転することになったんです」
「マンションと一緒に建てているオフィスビルにご入居いただけるんだ」