優と現場で出会ってから、ふと気を抜くと優のことを考えてしまう。

「専務、専務」
「へ!?」

 秘書に何度か呼ばれていたようだが、全く聞こえていなかった。

「どうかされましたか?」
「いや?なにが?」

 誤魔化してみるものの、不審な表情を向けられる。

「最近、ボーッとされていることが多いようなので。いつも以上に、現場に行かれているのが原因じゃないですか?」
「いや、それは関係ない」

 否定はしたが、全く関係ないとも言えない。疲れているわけではないが、気づけば優のことを考えている。

 そのことを、目の前にいる秘書の女性をはじめ、社内の人間に知られるまいと思っているが、すでに近頃の瑛斗の様子を不審がられている。気をつけなければ……。

 社長や副社長には専任の秘書がいるが、瑛斗は自由にしていたいと雑務だけを秘書課に回す。

 今も、回ってきた仕事の内容を専務に確認に来るだけで、秘書課では取り合いになったほどだ。