◯学校 翌日
◯職員室前廊下 放課後

舞が職員室の扉を開ける。後ろには数名の生徒会員。ドアのすぐ横で待っていた香織が、舞の姿を見てすぐにかけよる。

香織「舞ちゃん、話せた…?」
舞「うん、無事に解決できそう。」
香織「よかった…今まで気づいてあげられなくて、ごめんね」
舞「ううん、香織のおかげで勇気が出たよ。ありがとう。」

舞が後ろを振り返る。

舞「みんなもありがとう。おかげで、ちゃんと話し合いができた。」
生徒会副会長「ううん、僕らも同じことは思っていたから」
生徒会員1「いっつも舞先輩のこと頼ってばかりだったのに頼ってもらえて嬉しかったです!」
生徒会員2「私もあの人のことで、ちょっと悩んでいたので…こちらこそお礼を伝えたいです」

舞が笑顔になる。

舞(優しい人ばかりだ)



◯〜その頃〜
◯教室

リアム「あああああああ舞大丈夫かな傷ついてないかなちゃんと話せたかな解決できたかなどうしよう解決できてなかったら僕がその人のところに殴り込みに行っちゃうかもしれない」
波瑠「リアム、うるさい。」
優雨「すごい勢いで話してるけど大丈夫?」
リアム「ごめんって!!!」
波瑠「ていうかわざわざ放課後にお前の話に付き合わなきゃいけないってどういうこと」
リアム「今度クレープおごるからぁぁぁぁぁぁぁ」
波瑠「許す」
優雨「はやっ」

教室のドアが開いて、舞と香織が入ってくる。
それに気づいたリアムが、机から顔をあげる。

優雨「話しかけに行けば?」
リアム「勇気が出ない…」
波瑠「意外とヘタレだよな、リアム」
リアム「うぐっっっ」
波瑠「出会ったばっかりのころはヘラヘラしててチャラ男感満載だったのに」
リアム「うぐぐぐぐっっっ」
優雨(めっちゃダメージ食らってるじゃん)
「まぁ、本物の恋を見つけたんだからなー、気持ちは分からなくはない」

舞がリアムの方へ歩いてくる。顔にどんどん笑みが広がっていくリアムと、あきれている優雨・波瑠。


舞「無事に話せたよ。あとは、先生方が解決してくれるみたい」

それを聞き、ますます笑顔になるリアム。

リアム「舞に笑顔が戻ってきた。よかった」
舞「…えへへっ。本当にありがとう、リアム!」

驚くリアム。

リアム(名前…初めて呼んでもらえた! しかも呼び捨て…どうしよう、嬉しい)
舞(なんでリアムの顔、こんなに赤いんだろう…?)


舞「あとさ…できたらお願いなんだけど、今日一緒に帰らない?」
リアム「帰る!!!!!」

ものすごい勢いで立ち上がるリアム。

波瑠「おい、俺らのこt」
優雨が波瑠の口を全力でふさいだ。

リアムはもうすでにカバンを手に持ち、舞と一緒に帰る気満々だった。

優雨「僕らはもう少し図書室で勉強してから帰るね。」

波瑠が優雨のことをにらむ。

優雨(リアムのためだ、これくらい我慢しよう)
波瑠(まったく…)
リアム(ごめん二人とも…完全に忘れてた)

リアム「おっけー!」
舞「じゃあ、さようなら~」


舞が、波瑠と優雨にぺこりと頭を下げた。


― — ー ー


帰り道を歩くリアムと舞。リアムが道路側を歩いていた。

舞「さっきも言ったけど…今日は本当にありがとう。リアムのおかげで、勇気を出せた。感謝してもしきれないや」
リアム(ツンデレな舞が素直に気持ちを伝えてくれてる…! しかも、好印象を与えられてる!! 嬉しい!!!)
「力になれてよかった」

それから少しばかり沈黙が続いた。

舞「あ、椿だ」

舞が道端に咲いていた花を指さして言う。

リアム「椿…?」
舞「あのお花の名前。知らない?」
リアム「見たことない」

リアムが横に首を振る。

舞「冬から春にかけて咲くお花なの。寒い時期から暖かい時期に移り変わる瞬間に咲いている花なんだよ。健気で儚くて、綺麗じゃない?」

舞が椿を見つめる。

リアム(…かわいい)

気が付けば、リアムはスマホを構えて写真を撮っていた。パシャ、と音が鳴り響く。

舞「椿の写真撮ったんでしょ! 綺麗だよね、本当に。」
リアム「うん、綺麗」

リアムが撮った写真、それは舞が椿を見ているところだった。

リアム(一生大切にしよう、この写真)



―――幸せそうな笑みを浮かべる舞を見て、リアムはそう思った。