〇学校
〇舞とリアムの教室 (朝のホームルーム)


教師「えー、転校生がやってきました。」
舞(あぁ、あいつのことか。…同じクラスだと厄介なことになりそうだから嫌だったのに。)
クラスメイト1「どんな人だろー?」
クラスメイト2「イケメンだったら鼻血。」
クラスメイト1「そんなマンガみたいな展開、あるわけないじゃん…」
クラスメイト3「バスケ部入ってくんないかな~。」

リアムがドアを開けて、スタスタと入ってくる。
騒がしかったクラスメイトがシン、と静かになる。

リアム「おはようございます。」

クラスメイトにどよめきが広がる。
舞を除くクラス一同(え…? めっちゃ外国人の見た目なのに日本語がしゃべれるの、この人…?)

リアム「ヘニンガ— リアムです。この高校の、交換留学プログラムを利用させてもらい、3ヶ月間日本に留学させていただけることになりました。日本に住んでいた経験があるので、日本語はしゃべれます! よろしくお願いします!」
教師「と、いうわけで皆さん仲良くねー。ヘニンガーくん、あそこの席に座ってー。」

舞(よりにもよって私の隣の席かよ…!)


リアムが堂々と席の間を歩いていく。クラスメイトが横を通るリアムを凝視する。


リアム「よろしくね、ま・い」
舞「うげっ。」
リアム「声に出てるよー」
舞「わざとだわ」



〇一時間目の授業終わり


――キーンコーンカーンコーン


舞の大親友、香織が、舞の席の方へ歩いてやってくる。
リアムはクラスメイトに声を掛けられたため、席を立っている。


香織「舞ちゃん、ヘニンガ― リアムくんとなんか関係あるでしょ」
舞(するどっ…! ていうか気づくの早くない?!)
「あ…うん。」

香織が舞に抱きつく。

香織「詳しく教えてぇぇぇぇぇ!!! 大親友に隠し事はダメ―っ」
舞(香織は普段ふわふわしてるおっとり系なのに、イケメン好きの面食いっていうのは誰も知らないだろうな…)


舞が香織に顔を近づける。小さな声で会話を始める。

舞「ただのホームステイ先の娘とホームステイしに来た人ってだけ」
香織「それってつまり同居!?」
舞「…そうといえばそうだけど特に何もない!」
香織「ちぇー、少女漫画展開があるかなーって期待したのに…。」

リアムが、早速できた友達を連れて舞と香織の方へ近づいてくる。
至近距離でリアムの顔を見た香織が、思わず目を輝かせる。

リアム「まーい! 何話してんの?」
舞(なんでいちいち絡んでくるの…)

舞が怪訝な顔をする。そんな様子の二人を見て優雨が言った。

優雨(リアムの友人)「御子柴さんと知り合い? 今日が初対面っていう雰囲気じゃないけど…。」
舞(頼むから余計なことを掘り下げないで…)
「あー…そうだね、知り合い。」


リアム「なんて言ったって、僕らは同じ家に住んでるからね~」


優雨と波瑠(リアムの友人)「は?」
近くにいたクラスメイト「え?」

舞「あ?」

香織が横で笑いをこらえようと肩を震わせている。

空気を読まないリアムは、色んな人から注目を浴び・舞からは睨まれる――そんな中でもいたって普通に笑顔だった。


舞「…なんでわざわざ言うの」
(変な関係を疑われるじゃん!)
リアム「別に隠す必要もなくないー?」


リアムが舞の腰に手を回し、舞の体を引き寄せる。二人の体が密着した。それからリアムは、少しかがんで口を舞の耳元の方へ近づけた。今にもその口が舞の耳に触れそうだった。自分の耳に熱が集まっていくのが、よく分かった。
それから、リアムは囁く。


リアム「別に僕ら、何もやましいカンケイじゃないから――ね?」


首をコテン、としながら上目遣いをするリアム。


リアム「二時間目の教室、行こう~」


急にパッと離れて、何事もなかったかのように言い始めたリアム。優雨と波瑠は固まり、クラスメイトは見て見ぬふりをし、香織は変わらず笑いをこらえていた。
時間差でそのことを理解し、我に返った舞が叫ぶ。


舞「アメリカ人だから、って何しても許されると思ってるんじゃねーっ」


リアムが舞の方へ振り向き、にやりと笑った。






リアムが教室の扉を閉める。


リアム(僕のだからっていじめたくなっちゃう…他のやつなんて見ないでほしい…。



そうか、これが――――――――恋か。)