◯4月末
◯空港

一か月、その時間の流れは、とてもはやいもので。
アメリカ行きのチケットと、大きなスーツケースを持ったリアムが、空港の廊下に立っていた。

舞「今までありがとう。」
(4ヶ月間――付き合い始めてからは2ヶ月――あっという間だった。)
リアム「何その言い方。一生のお別れみたいな言い方しないでよ〜」

舞が、溢れ出る涙をこらえきれず、涙を流す。

舞「行かないでよ…そばにいてよ」

舞がリアムに駆け寄り、固く抱きしめる。

リアム「ごめん、もう行かなきゃだ」
(舞が自分からハグしに来てくれることなんて中々無い――幸せだな。僕だって別れるのが惜しい)
舞「...If I were a bird, I could fly to you.」
リアム「英語、上手になったね」
舞「リアムが教えてくれたからだもん」

話せば話すほど、離れ離れになることが惜しくなったリアム。一筋の涙をこぼす。それから、すぐに手で拭った。

リアム「絶対に、迎えに来る。」
舞「うん」
リアム「いっぱい電話しよう」
舞「する」
リアム「いっぱいメールもしてほしい」
舞「いっぱいする」
リアム「何があったか毎日報告してよ。写真も送って。」
舞「うん、送る」

リアムが、舞のことを抱きしめたまま、キスする。多分、世界で一番甘いキスだった。
リアムが名残惜しそうに、舞から腕を離す。

舞「浮気したら許さないからね―っ」

頬をぷくっとふくらませる舞と、笑みを浮かべるリアム。

リアム「僕の愛の深さをまだまだわかってないな、舞は」

アナウンス「――ご搭乗の皆様にお知らせです。航空便123の方々は…」

リアム「そろそろ行かなきゃみたい。またね」
舞「またね」
リアム「大好きだよ、」
舞「私は愛してる」
リアム(今日はツンデレじゃなくてデレデレの日だ…かわいい)

リアムが、手荷物検査のところまで歩いていく。舞のことが見えなくなってしまうところの一歩手前で、一度立ち止まって後ろを振り返り、それから手をふった。舞も手を振り返す。


お互いのことが見えなくなってから、リアムと舞は少し泣いた。ほんの、少しだけ。

リアム・舞(泣くのは今だけ。だってまた会うって、約束したんだから)




◯5年後 大学を卒業したリアムと舞。
○ヘニンガ―家(夕方)


舞の携帯が、ピコンと音を鳴らす。すぐさま手に取ると、
【(リアム) 舞、着いたよーっ!!!!!♡BIG LOVE】
というメッセージが表示された。それを見た舞が、ドタバタと階段を駆け下りた。玄関のドアを開けて、「ヘニンガ―」と書かれた表札の前を通り過ぎる。


大きなスーツケースを持っている「金髪xブルーアイのイケメン」―――リアムを見て思わず駆け寄る舞。


リアム「Hi!!! 舞!」
舞「リアム!!!」


舞が突然リアムを抱き寄せ、その唇にキスする。


リアム「へんた~い」

舞がぷくっと頬を膨らます。

リアム「…って、五年半前の今頃、舞に言われたんだよな」
舞「いちいち思い出さなくていいし」

リアムが舞の手を取って、繋ぐ。それから、もう一度甘いキスをした。

リアム「愛してるよ」
舞「私の方が愛してるし」

少し離れて、それからまた抱きしめる。リアムが舞に顔をぐいっと近づけた。(鼻と鼻があと少しでぶつかりそうなくらいの近距離。)


リアム「こんにちは。今日からずっと、よろしくね。」
舞「こちらこそ! もう絶対に離さないもん」

それからもう一度、長くて甘いキスをした。



そんな二人の左手薬指には、椿の花がモチーフの、白いダイヤモンドの指輪が光っていた。






―――「白い椿」の花言葉:「完全なる美しさ」「至上の愛らしさ」