「……そりゃ、だめ、ですよ」
「だから、なんで?」
「なんで……って」
スイくんは目を見開いて固まってしまった。
……理由はないけど、ダメなんだ。
納得できない。私はちゃんと理由があるから。
「……というか、その二択なのがおかしいんでしょ」
眉間にシワを寄せて、スイくんは矛先をお母さんに変えた。
「だってママとパパは同じ部屋で寝てるしね~、それしか選択肢ないでしょ? あっ、安心して? スイくんの部屋の前は通らないようにするから!」
「その配慮全然いらない」
「えーん、なんで! 緋織ちゃんはスイくんと一緒にいたいって思ったんでしょお~!?」
「!」
お母さんの言葉で、スイくんは何かに気付いたようだ。
「あーそうか……」
雑に頭をかいてから、私の手を取る。
「……わかりました。行きましょうか」
「う、うんっ……!」
やった……なんで急に意見が変わったのかはわからないけど。
平屋の長い廊下を進む。
当然みたいに手を握ってくれるから、スイくんの手の大きさを覚えてきた。
「へへ……スイくん、ありがと」
「っ……、緋織先輩が喜んでくれるなら、なんでもしますよ」
はぁ、と息を吐く音が聞こえて、またため息かなって見てみたら、深呼吸だった。
私がよくしてることを指摘したから、気にしちゃったのかも。
「ふぅ、平常心平常心……」
何かを呟いてもいたけど、それは聞き取ることができなかった。



