――実は、別に私だってただ同居を楽しみにしてきたわけじゃない。
スイくんにアピールするため、準備はしてきたのだ。いいや、してこなかったと言う方が正しい。
うまくいくかはわからないけど……頑張る!
そんな決心の使いどころは、夜になってやってきた。
「緋織ちゃん、どこで寝たい? 一人で客間? スイくんとスイくんの部屋?」
究極の二択。
外すわけにはいかなかった。
「スイくんとスイくんの部屋――で!」
高らかに宣言した私の背後で、
「……はい? な、何言ってるんですか」
スイくんがマグカップをゴトリと落とした。
「わ! 割れてない!? 中身も……よかった、空だったんだねっ!」
拾い上げてスイくんの手に戻す。
カーペットの上だったから無事だったみたい!
「今、俺の部屋で寝るって言いませんでした……?」
「言ったよっ! ……だ、だめ?」
うちに来た最初の夜みたいに、二人でお喋りできたらな、って思うんだけど。
まぁ後は、色仕掛け……だよね。
スイくんの部屋で寝ることがどういうことを指すのか、一応わかっているつもりだ。
「ダメっていうか……いやダメですけど……」
「な、なんでダメなの?」
「え…………」
スイくんの目を見つめる。
お願いしたら、押し切ったら、いいって言ってくれないかなぁ……?



