「さ、捜しましょう! もっと隅々まで!」

「そーね!?」



 家周辺、車の中、バッグ……分担してくまなく捜す。


 草むらに落としちゃってないか見ていたら、スイくんが近付いてきた。



「はぁ、すみません、緋織先輩……。うちの親、こういうところがあって」

「ううん! 捜せばきっと見つかるよっ!」

「……すみません」



 最後にもう一度だけ謝ると、捜索に戻っていった。





「あっ、あったーっ!」



 と声が聞こえたのは約十分後。


 真上に鍵を掲げて涙目になったスイくんのお母さんが、わたしに駆け寄ってきた。



「あーんごめんね緋織ちゃん! ほんとにありがとう! ありがとう!」



 ぎゅーっと抱きつかれる。


 うん、よかった!



「このまま見つからなくて路頭に迷うことになったらっ……切腹だったっ……!」

「業者呼べばいいだけでしょ」



 スイくんはご立腹のようだった。


 お母さんの首根っこを掴んで私から剥がす。



「どこにあったの」

「え、えっとお……ママのポケットの中、でした!」

「はぁ……」



 睨み付ける勢いで鋭かった視線が私に向いた瞬間、一変して反省の顔になる。



「早々にご迷惑をかけて、すみませんでした」

「えっ、いいよ! 見つかったんだし! 入りましょ! 飲み物もらってもいいですか?」



 空気を変えようと明るく振る舞ってみる……んだけど。



「っ……そうだよ、こんな暑い日に外で捜し物とか、お客さんにさせることじゃないだろ」



 それが、スイくんの怒りを大きくさせてしまったみたいで……。