「それじゃあお母さん、行ってくるねっ!」



 車に乗り込む直前、振り向いてお母さんに手を振った。


 お母さんは振り返してくれた後、助手席の窓からにこにこと顔を覗かせるスイくんのお母さんに目を向けた。



「ん、行ってらっしゃい。すみません、よろしくお願いします」

「まっかせて! 緋織ちゃんに何かあったら……切腹しますっ!」

「しなくていいです」



 私とスイくんの、お母さん同士の会話。



「兄さんも、よろしく」

「うーい」



 運転席に座るお母さんのお兄さん――叔父さんとの、兄妹同士の会話。


 それを済ませて、お母さんはもう一度私に体を向ける。



「――じゃ、お盆には帰ってくるのよ」

「……うんっ」



 私は笑顔を崩さないように頷いた。






『……ということなんですけど、夏休みはうちに来ませんか?』

『い、行くっ!』



 二つ返事の末、私は夏休み早々スイくんの家に住まわせてもらうことになった。


 夏休み限定、逆転同居。


 わくわくするねっ!


 スイくんのお父さんが送迎してくれる車に乗って、いざ出発!



「ねね、緋織ちゃん緋織ちゃん、そっちでのスイくんってどんな感じだった? スイくんてばママが連絡してもそっけなくて、全然教えてくれないの~!」

「え! えっと、そうですね……」



 車内ではスイくんの話題で持ちきり。


 ときどきスイくんが強引に話を変えようとしたり、叔父さんが軽快な笑いを添えたり。


 良い家族だなぁって癒された。