「……そうですか」

「ごめんね、つまんなくて」



 こういうのって一番求められてない回答だよね。



「いえ、安心しました」

「安心?」

「あ……いや、好きな人がいるのにこうして俺と寝てるなら、正気じゃないですから」

「え? どういうこと?」



 私、正気じゃないの?


 スイくんがこっちに向くのをやめてしまった。仰向けに戻ってはぁっと息を吐く。



「……苦労しそうだ、これは」



 そしてポツリと一言。


 何を言っているのか、全く理解できない。


 理解できないのは……怖い。



「そ、そういえば、スイくんはなんでウチの高校にしたの?」



 ネガティブな気持ちを抑え込みたくて、すぐに話題を変える。



「まぁ……好きな人と同じ学校に通いたかったので」

「えっ!」



 ささやくのを忘れて大きな声が出てしまい、慌てて口を閉じた。


 危ないっ、お母さんは寝てるんだから、今まで通り小声で話さないと。


 もぞもぞとお母さんが身動ぎをする。起きてしまったかもしれない。


 私はさらにスイくんとの距離を縮めて、声ももっと潜めることにした。


 お母さん、ごめんなさいっ!



「っ、ちょっ、ちか……」

「スイくんの好きな人もおんなじ高校なのっ?」

「はぁ……え? や、あの、近いです」

「これくらい近付いてお話しないと、お母さんが起きちゃうよっ」

「あー……だったら」