スイくんと一生一緒にいたい。


 だけどそんなの無理だって知ってるよ。


 だってスイくんには好きな人がいるんだから。


 私より、一緒にいるべき素敵な人がいるんだ。


 もしそんな心の内を全てさらけ出したとしたら、スイくんは優しいから『いいよ』って言ってくれるかもしれない。


 でもね、そんなのよくないよ。


 スイくんには、本気で好きな人と一生一緒にいてほしいよ。


 だから私、考えたんだ。



 ――スイくんの好きな人が私になれば、解決するんじゃないかって。



「というわけなんだけど、どうしたらスイくんの好きな人を私に変えられるかな!?」



 机を強く叩きながら、しぃちゃんと大ちゃんに相談する。



「どうするもなにも」



 バチンッ!!



「ってえぇー! なにすんだ詩歌!」



 しぃちゃんが顔をこっちに向けたまま、大ちゃんの開かれた口に平手打ち。


 痛がる大ちゃんの口の周りは赤くなっている。


 だけどしぃちゃんは、まるで止まっていた虫を追い払いましたよ、みたいな態度だ。



「いい? 緋織、男なんて単純よ。例えばこうして、」



 しぃちゃんが大ちゃんの腕を取る。



「ぴったりくっついて目なんて見ちゃえば…………大吉、あなたは異常な部類だわ」

「なんで急に叩かれて貶されなきゃいけないんだよ」

「これだから野球バカは……。あなたにはこういう方がいいわよね、『甲子園、大吉の好きな曲を全力で演奏するから頑張りなさいよ』」



 最後に、にこっと笑顔。



「おー、それは嬉しい」

「……。……ま、単純なことには違いないわね」



 な、なるほど……?