「ごめんなさい」



 俺の部屋で話したいとお願いされた先に待ち受けていたのは、覚えのない謝罪の言葉。



「今から私の気持ち、全部話す……。いくらでも怒っていいから……でも、」



 唇を震わせ、掠れた声を出しながら。


 緋織先輩は深く頭を下げた。



「お願いします。……同居は、やめないでほしい、です」



 俺はといえば状況が掴めずに目を白黒させるのみ。


 確実に、手を握り返されたからといって喜んでいる場合ではなかったよな?


 なぁ、最近の緋織先輩、落ち着きがあってそれもまた可愛いな、むしろ美しいなとか思ってた過去の俺。


 残念なお知らせです。



 たぶん俺――今からフラれます。



 まぁ……バレてるよな。


 かなり態度に出すようには心がけてたわけだし。


 吉と出るか凶と出るか賭けをしてみて、俺は凶を引いてしまったということだ。


 いつか来るだろうと構えてたはずだった。


 ただ、いざ来るとなると……きついな、どうしても。


 それで同居は続けたいとか、なんて残酷な人なんだ。


 だとしても、好きなんだけど。



「まずは、座りましょうか?」

「……そうだね」



 ベッドに並んで腰を落とす。


 緋織先輩の話、ちゃんと聞こう。


 彼女はきっと、たくさん悩んで答えを出してくれたんだ。


 たとえどんな内容でもいい。


 俺はゆっくりと耳を傾けた。