と、ラッキーなことが起こればアンラッキーなことも起こるわけで。



「緋織ちゃんって鈍感なんかなぁ、四宮彗くん」



 ……な。


 体育の授業が終わった後。


 更衣室で着替えていたら、あの新聞部の人が中に入ってきて、俺に話しかけてきた。


 うわ。名前、覚えられてる。



「なんで、ここに」

「次うちのクラスが体育だからやけど?」

「まだ誰も着替え終わってません」

「ええよ、待つし」



 入ってくんなよって意味なんだけど。



「それより、話の続きしよや」



 肩に腕を回される。


 ゾワッと全身に鳥肌がたった。



「彗くんは、緋織ちゃんを鈍感やと思ってるか、否か。聞かせてや」

「なんでそんなこと言わなきゃいけないんですか」

「そーかそーか。答えてくれたらこれあげようと思ってたんやけどなぁ」



 見せられたのは一枚の写真。


 緋織先輩が汗を流しながら走っている姿の。


 ポニーテール、だ。



「ほしいやろ?」

「は? 盗撮じゃないですか」

「でもほしいやろ~?」

「……っ、く」


 今までもほしい情報のためにこうやってきたのだろう。


 ほしくない、わけがない。

 
 けど、もらうわけにもいかない。



「いつか自分で撮らせてもらいますから、いらないです」



 俺は肩に置かれた手を強引に引き剥がした。


 だけど質問内容は頭に残っていて、無意識に答えを考えてしまう。


 緋織先輩が鈍感かどうか……。