居候の自覚が足りなかった。彼女は早起きをして家事をしているんだ。


 量を増やすだけ増やして、片付けてもらっている間にのんきに爆睡していたなんて。



「……すみません。明日から俺も早く起きます」

「ん? なんで? 私のはただの習慣だから、スイくんはすっきり目覚められるときに起きた方がいいよっ?」

「でも、」

「寝不足で授業中に居眠りでもしちゃったら大変だよっ!」



 ねっ? と笑顔で諭してくる緋織先輩に、俺は何も言えなくなった。


 隠すよな、この人は。自分の努力を。


 こんな状況で、辛いときだけ寄り添ってあげたいなんて……傲慢だ。



「……早朝って、体操のテレビやってるじゃないですか。あれを、見たくて」



 ただ、彼女を正攻法で頷かせるにはまだ好感度が足りないのだと思う。


 だから結局また遠回しに、納得させるための言い訳を紡ぐ。


 俺の言葉に、緋織先輩はパァッと明るく嬉しそうになった。



「そうだったんだ! あれ、実は私も毎日やってるよっ! 目がシャキッとするからすごくいいよ!」

「俺も、ご一緒したいです」

「ほんとーっ? 仲間ができて嬉しい! それなら、その時間に合わせて起こしに行こうか?」

「えっ、お願いします」



 意図せず、好きな人が朝起こしに来てくれるイベントを作れてしまった。


 その後に行われるのは、朝のラジオ体操なわけだけど。


 いや……緋織先輩がいるなら、どんなことだって最高だ。