「安心しぃ、冗談や。緋織ちゃんはなんやこう……犯罪臭があんねんなぁ」
「は、犯罪臭!? 何するつもりだったんですかっ!?」
「あ~ちゃうちゃう。大人が子供に手ぇ出すみたいな、そんな感じ? 緋織ちゃん見た目は年相応やけど、なんかなぁ……」
なんかなぁとは!?
開いた口が塞がらない。
後ろからスイくんのため息が聞こえた。
「……そんなことないんですけど」
「ほら! そういうとこ! 興味あるわぁ……今度の新聞はキミの特集にしよかなぁ」
……!! そ、それはほんっとうに困るっ!
「スイくんっ、今度こそ逃げよっ! 逃げるからねっ!」
この場で一番早く逃げられる方法で、私は駆け出すことにした。
スイくんの手を引っ張るだけじゃまだ遅い。
私には五十メートル走を五秒くらいで駆け抜けられる脚力がある。
スイくんは、私の肩に手を回したままだった。
だから――スイくんをおんぶして、走った。
「よいしょおおっ!」
「――っ!? は、ちょっ、緋織先輩……!?」
「大丈夫っ、持てそう!」
「いやそういうことじゃ、」
「舌噛んじゃうから、口閉じててっ!」
一回りくらい大きい男の子を抱えて廊下を爆走する私。
すれ違う人達がぎょっと目を見開いている。
あまりにも逃げることに必死で頭が回らなくて。
後日、藍月緋織伝説の内容に項目が追加されることになるなんて、思いもしていなかった……。



