あれだけモテるスイくんだよ。選り好みし放題だよ。


 生半可な子は好きにならないと思うんだ。



「あ、あの先輩……何か……?」



 ドアの近くにいた子が恐る恐る話しかけてくれる。


 おっとおっと、なんて心優しい子なんだろう。


 気を遣わせちゃって申し訳ないね。



「大丈夫、自分で行くねっ! ありがとう!」



 そう答えてまたスイくんの方を向いたとき――ガタッ! と物音がして、



「緋織先輩」



 立ち上がったスイくんと目が合った。


 声かける前に気付いてくれたみたい。


 パタパタと小走りで近付いてくるスイくん。


 な、なんか、着実になつかれてる感じがするような……っ!



「もしかして、迎えに……?」

「そうだよ! ついでに各部活のおすすめポイントと、おすすめできないポイントをまとめてみたからあげるねっ!」



 持っていたノートを掲げて見せる。


 休み時間を使って急いで書いた。スイくんには悔いなく選んでほしいからね!



「……俺の、ために」

「あのね……実はね、危険な部活があるんだよ。詳細はこの中に書いてるから確認してほしいんだけど、部員と目を合わせるのもよくない、そんな部活があってね……」



 これは主観でしかないから、もしその部活に入りたがっている一年生がいたときのために声を潜める。


 そして裏取引さながら、ノートの手渡しが完了した。



「でさっ、どこから行く? ここから一番近いのは書道部と美術部……」

「あの、その前に」

「ん?」




「緋織先輩、もう俺のクラスに来ないでください」