クールで一途な後輩くんと同居してみた



 心臓が破裂しそうだ。


 こんな会話一つで? 笑顔一つで?


 え? こんな調子で……告白とかできんの?


 というか未だに、彼女の呼び方すら定まってないのに?


 藍月、さん。藍月、先輩。


 ……緋織、さん。


 ……緋織……先輩。


 いやどれもハードル高……。



「ま、待って待って! 鍵閉めないとだから、先に行っちゃやだよっ!」



 そんな焦った声が聞こえたのに慌てて振り返った。


 無意識に靴を履き替えて外に出ていたようだ。


 一人で道路まで進んでしまっていた。



「……すみません」



 すぐに玄関扉の前まで戻る。



「へへ、びっくりしたよ。置いていかれるかと思って」



 カチャリ。二つの鍵が施錠される。


 少しだろうと彼女を不安にさせてしまった。


 罪は重い。



「……もうしません。絶対」

「えへへ、ありがと」

「もう絶対、置いていきませんから」

「……、うんっ」



 彼女は鍵に落としていた目線を上げ、俺に微笑んだ。


 ……よく考えれば。


 この笑顔は俺だけに向けられたものではあるけど。


 こんな笑顔を見られるのは、俺だけじゃないんだろうな……。