『でも二人きりのときは別ですよね』

「っ!?」

『お父さんの部屋だとちょっとあれなので、するとしたら……』

「……まさか、わ、私の部屋っ!?」



 汚くはないけど、お世辞にも整頓されているとは言い難い私の部屋。


 まだスイくんを呼んだことはない。



「~~っ、それより! スイくんに報告したいことがあってっ……」



 強引に話を変える。


 か、片付けは、後でしておくとしてっ。


 お父さんの話、お母さんといっぱいできたんだよって……。


 口を開いたとき、自宅はすぐ目の前で。


 ドアの前に、すらりとした背格好が立っていた。




「――あ、緋織先輩」

「スイくんっ!?」



 
 スマホを耳に当てたスイくんがこちらを見る。


 その姿は間違いなく、この間お別れしたはずのスイくんだった。



「帰ってきてたの!?」

「早く緋織先輩に会いたくて。俺、もう緋織先輩と一緒にいないと無理です」



 たたっと駆け寄ったら、大きく手を広げてくるから。


 迷わずそこに飛び込んだ。


 ぎゅう、と苦しいくらいに抱き締めてくれる。



「はあ、数日ぶりの緋織先輩……。足りなくて禁断症状が出るとこでした」

「ほ、本当に数日ぶりだよ……?」



 たった数日でそんなことになっちゃって、この先大丈夫なのかな……?




「――ただいま、緋織先輩」




 この温かい香りの男の子は、紛れもなくただの四宮彗くん。


 これから話す言葉に大好きな笑顔を向けてもらうため、私は彼を見上げた。





おわり