戸締まり、よし。
換気中だった窓を閉め、昨日から自分の部屋となったこの場所を見渡す。
どうしても目に付くのは、天井スレスレまである大きな本棚だ。
試しに一冊抜き取って開いてみるけど、小難しい内容に目が滑る。
わかるのは、どの本も保存状態が良いということだけ。
きっと、読まずとも大切に管理されてきたのだろう。
「スイくーん! 準備できた?」
コンコン、ノックの音がした。
ちゃんと昨日言ったことを守ってくれているらしい。
彼女はいささか……危機感が足りないと思う。
というより、俺のことを男として意識する発想すらないんだろうな。
「……お待たせしました」
「わ、あ……っ!」
廊下に出た途端、彼女が感嘆の声をあげた。
俺を見上げて目をキラキラさせている。
は? なに? 可愛いな。
抱き締めやすそうな身長差だ。
こうしてまっすぐ対面したことがないから知らなかった。
「……なんですか」
「あのねっ、スイくんってなんていうか
……いいよね!」
「は、い……?」
ほんとに何?
いちいちときめいて苦しいからあまり喋らないでほしい。
「つまりね――かっこいい!」
「……な、」
無邪気に明るく。パッと笑顔が向けられる。
俺に。
俺だけに。
やっ……、
「……やば、」
「へ?」
「もたもたしてないで早く行きますよ」
「あっ、うん!」



