「――喜んで」



 手を緩めた瞬間に襲ってきた柔らかな感触。


 一度だけで、こんなに多幸感に包まれるのに。


 何度もされちゃったら……。



「スイくん……? わた、し……おかしく、なっちゃう……」

「すごい殺し文句ですけど、自覚あります?」

「わかんない、っ、」



 キスされる度、思考が溶けてくみたいな。


 自分じゃ制御できなくて困る。


 思ったことをそのまま口に出しちゃうから、少し怖いけど。



「大好きです、緋織先輩」



 ただ一つ、残った理性の中。


 笑顔でいてくれるスイくんがいるだけで、よかったなぁって思う。



 好きでいてくれて。


 ずっと見ていてくれて。


 全部受け入れてくれて。



 スイくんがいなかったら、たぶん私――。



「スイくん、ありがと……」



 私も大好きです。



 意識が遠のいていく。


 やがてまどろみが包むと、そのままプツリと消えていった。