「……勝手に死んだお父さんに、勝手に拗ねて怒ってるんだ、私」
悲しかったのは事実。
だけど、時間を追うごとに怒りが勝っていってしまったんだ。
スイくんに話してみたところで、どうにかなるものでもない。
気まずい思いをさせてしまった。すぐにいつもの緋織に切り替えないと……、
「――子供にとっての親って、絶対的な大人じゃないですか」
スイくんが、苦笑を交えて口を開く。
「かくいう俺も小さいときは、親なんてなんでも知ってるものだと思ってましたし……まぁすぐに、頼るべき相手じゃないなって気付いたんですけど」
肩に、顎が乗せられた。
「でも気付けてよかったです。親を大人だと思っていたときの俺は、母親、父親という人間をどういう人物なのか理解していなくて、記号的な『親』を好きなだけだったんです」
スイくんは随分達観した物言いをする。
年下なのにときどきスイくんをお兄さんみたいに感じてしまうのは、こういうところが由来するのかな。
「緋織先輩のお父さんは、本当はどういう人だったんでしょうね……」
「……っ!」
わだかまりのど真ん中を突かれた気がした。
消えた記憶。緋色の織。何を掘り返したって、私の中にお父さんの思い出はない。
私……お父さんのこと何も知らないんだよ。
お父さんが死んだ理由だって推測でしかなくて、何もわからないんだよ。



