この同居を始めに提案したのは俺からだった。
年に一度しか会えない、織姫彦星的ロマンチックな関係性。ただ、会えたとしても緊張で会話ができない。
それでは何も進展しないと危機感を覚えたから。
だったら強制的に会話せざるを得ない状況に持っていくしかないと思った。
だから正月の日、彼女の母親にこっそり伝えたのだ。
「え? ウチに住みたいの? いいんじゃない? 緋織もいいって言うと思うから、準備ができたらすぐ来ていいわよ」
おばさんは俺の提案をあっさり承諾。
拍子抜けするレベルだったけど、
「……緋織のことよろしくね、スイくん」
そう笑った姿は、さすが母親というべきか。
あの日の彼女に瓜二つだった。
「スイくん、今日どっか一緒に行かないっ? この辺りの案内も兼ねて!」
食パンをかじりながら笑顔で話しかけてくる彼女。
なんなんだろうな、この可愛さは。
国宝に認定していいだろ。
「それは……で、」
デートだ。
完全にデートのお誘いきた……。
「で?」
「で、で……出かけるということですか」
「スイくんに決まった予定がなかったらだけど!」
「……別に、ないです」
デートだ……。
残念ながら向こうにはそんな意図はないだろうけど。
チャンスではある。
このデートで、少しでも俺の気持ちを伝えるんだ。



