「す、スイくん!? 好きな子がいるのにこんなこと、よくないと思うなっ!?」

「いいんです。緋織先輩が嫌じゃなければ、俺も嫌じゃありませんから」

「そっ、そういう問題じゃ……っ」



 嫌じゃない、に決まってる。


 逆にめちゃめちゃ喜んじゃってるよっ……!


 だって今のスイくんは寝ぼけてるわけじゃない。


 ちゃんと意思を持って私に触れているのだ。



「俺から言いますから……ちゃんと聞いてくださいね」



 優しく言われてしまっては、逆らうことは難しかった。



「……うん」



 頷いて、スイくんの胸に頭を押し付ける。


 こんなご褒美、もう二度と来ないだろうから。今だけ、堪能させてほしい。


 スイくん……好き。好きだなぁ。


 私を好きになってほしかったなぁ。



「緋織先輩、――」

「……? え、なに?」

「……いえ。明日言います」



 ぎゅう、と一段階強く抱き締められる。


 少し苦しい、けど。その苦しさがなぜか心地よくて。


 罪悪感から目をそらしながら、明日に向けて目を閉じた。