「私、帰ります!」
マリちゃんは私たちの言葉に耳を傾けようとせずに、勢いよく立ち上がるとそのまま鞄を持ってドアの方へと歩いて行ってしまった。
「マリちゃん!」
すぐさま後を追おうと席を立つと、「おい、幸野」と、五十嵐先生は私を呼び止めた。
「五十嵐先生スミマセン、私、マリちゃんと話してきます! 今日はこれで」
「ふざけんな、てめぇ。こんな料理俺一人で食べきれるとでも思ってんのかよ」
「じゃ、じゃあマリちゃんと話したら戻ってきますんで」
「残り物の後処理なんて頼んでねぇんだよ。俺か、梅田か選べ」
子どもみたいな事を言い出す五十嵐先生。
そんなに私がマリちゃんのところに行くのが気にくわないのだろうか。五十嵐先生からしてみたらマリちゃんも「ただの研修医」なんだろうか。
マリちゃんが進む道が麻酔科じゃなくてもいい。
けれど、あとわずかしかないマリちゃんの研修時間をこんな形で終わらせたくはない。



