「おい、んなフラフラじゃ帰れねぇだろ。オレん家泊まってけ。近くだから」
「五十嵐先生、ひっぐ、ベッド貸してくれるんですか」
「オレのベッドはキングだからでけぇぞ。それにふかふかだ」
「えへへ、楽しみですー」
二人の話を聞いていた綿谷はマジ!?と、顔を赤くしている。五十嵐先生のことは尊敬している。でも、幸野にだけは触れてほしくはない。
二人楽しそうに飲んでいるところに、「お疲れ様でーす」とイヤな笑みを浮かべて入ってやった。
ドアを開けると幸野は「アハハ、やばいです、五十嵐先生ぇー私、久我先生のことキライすぎて幻覚見ちゃってますー」と笑いながら五十嵐先生に報告している。
人はお酒に酔うと本音が出やすくなるという。幸野は俺がキライらしい。苦手を通り越してむしろ、嫌われてしまっていた。
五十嵐先生は幸野に「ばっか! これは幻覚じゃねぇ、本人だ!」と注意している。
――ここで何とかしないと幸野が俺を意識することはない。
「五十嵐先生、ここは俺が払うんで幸野を家まで送ります」
机の上に置かれていたお会計の伝票を持つと、五十嵐先生は意外にも、
「んん? んー、そうかー? 悪いな、久我ー」
すんなり幸野を渡してくれた。



