綿谷は笑いながら「トイレ」と、席を離れた。
岩本くんも俺に対して話題を振ってくれるが、幸野が俺を苦手としていることが気になって、それどころじゃない。岩本くんの話が全然頭に入ってこない。申し訳なく思いながらも適当に相槌を打っていると、
「おい、久我! この声、幸野?」
トイレから帰ってきた綿谷が個室の一室を指さした。
――は? 今何時だと思ってんだよ。日付変わってんだぞ。いるわけないだろと、そんなことを思いながらも気になって席を立つ。綿谷が「幸野」と指を指した個室のドアに耳を当てると、
「だいたい、久我先生も医局では皆にいい顔してますけどねぇ~~それがムカつくんですよ~~」
幸野の声が聞こえてきた。俺のことがムカつくらしく言いたい放題言っている。
一緒に耳を当てていた綿谷が「ブッフッ!」と笑いを吹き出した。そんな綿谷の頭をペシッと叩く。
気づかれない程度に少しだけ個室のドアを開けてみると、五十嵐先生が「まーまー、飲め飲め!」と幸野がいる方へお酒を運びまくっている。しかも大ジョッキが何個も。
あの変態麻酔科医、幸野を潰してどうする気だ。



