女癖さえ直れば何も言うことないのに。


 幸野のこともう一度注意しようと、五十嵐先生に詰め寄る。だって絶対分かってない。


「五十嵐先生、幸野に手出すのだけはやめてくださいよ!」

「ああ? あー、まあ状況次第じゃねぇ?」

「状況……次第? この際だから言っときますけど、俺、アンタのそういうところだけはマジでイヤなんです」

「プライベートでオレがなにしてようと良いだろ、別に。そろそろ戻らなきゃならねぇみたいだから戻るわ。あっ、オペになったらちゃんとオレ呼べよ」


 違うだろ。普通『久我、幸野のこと好きなの?』って聞くところだろ。そしたら俺も答えるのに。


 良いようにハメたかったのに、また良いようにハメられた。





 今日は一日中院内が慌ただしかった。外来の患者もやけに多かった気がする。当直終わりだったため今日は早めに休もうと夜の八時に切り上げた。


 医局から出て、ナースセンターの前を通ると、看護師から、「久我先生救急患者の対応なんですが、来てくれませんか!?」と、呼び止められてしまった。