近くに五十嵐先生がいなかったら、気管挿管すらままならず、患者様を大変な状態にしていたかもしれない。
ぎゅうっと拳を握り、今日一日を振り返り反省する。
五十嵐先生に呆れられないように早くしなきゃと、気持ちばかり焦ってしまっていた。大事なのは患者様なのに、私は個人的な私情を優先してしまっていた。
「怒ってんじゃねぇから、んな顔すんな」
五十嵐先生は口をつけていないジョッキを私に差し出した。
「まあ、今日は食って飲め。明日からはオレもいるし、おめぇの指導医だからな」
「はい! よろしくお願いします!」
***
注文した全ての料理が机を独占している。食って飲んでを始めて一時間が経過した。五十嵐先生の顔はお酒で真っ赤になっていた。
「おい、幸野」
と、私の名前を呼ぶ。
お酒を頂いたからといってあまり口を付けていなかった私は、五十嵐先生みたいには酔っていない。
「おまえって彼氏いるの?」
「――え? いないです……が……?」
唐突な質問に口をポカンとさせた。
そんな私を見て五十嵐先生は微笑むように、ニイッと歯を見せ、気味悪い笑みを浮べた。「ヨシヨシ」と頷いている。
ま、まさか……
「五十嵐先生……私狙いで?」
自信過剰なことを聞いてみる。ドキドキと鼓動を鳴らしながら、ゴクリと息を飲んだ。



