執刀医を飛ばすオーベン。
腕は本物だけれど、私はこの人について行ってもいいんだろうか。
業務を終えたのは、夜の十時を回っていた。通常勤で帰れる日なんて滅多にないけれど、昨日も残業だった。
こうも毎日残業だとさすがに疲れる。
私の横では五十嵐先生がお腹を擦りながら話しかけてきた。
「幸野、飯行くか。焼肉食いてぇ」
「い、いや、さすがに焼肉は……」
「患者の内蔵見すぎて食えないってか? 研修医じゃあるまいし……」
やれやれ、と、首を傾げる五十嵐先生に、つい、「オペ後に肉は食べれません!」と、強く言い放つ。
「じゃあ居酒屋だな。個室にしようぜ、個室に」
まだ「分かりました」と答えていないにも関わらず、医局室に機嫌良く戻った五十嵐先生は慣れた手付きで居酒屋に電話している。
――五十嵐先生。
顔は久我先生や内科の綿谷先生と違って彫りが深い。黒目が大きく、パッチリとした二重も羨ましい。鼻筋も高くしっかりしている。マリちゃんが言うようにとても男前だと思う。
ただ、その見た目からかチャラそうに見えて仕方がない。



