五十嵐先生は今日からウチの病院で働くことになったのだけれど、
「救急で患者様運ばれてきました! 麻酔の先生、手が空いてたら入ってもらえませんか!?」
通常のオペに加えて、救急で患者が次々と運ばれてくる。
「おい、幸野、急げ! 休むな!」
休む暇なく次々と麻酔をかける。今日は一段と忙しい。
私が一人人麻酔をかけている間に、軽く四人は終わらせている。圧倒的な速さだ。
患者の全身をコントロールしながらローテションで次々と見ていく。五十嵐先生の腕は教授よりも医局長よりも、今ウチにいる麻酔科医の一番トップだと思う。
「……小夜先輩……、あの、今日から来た五十嵐先生、本院でも相当な腕だったらしいですよ」
1年後輩の麻酔科研修医のマリちゃんが、麻酔記録をつけながら私に耳元でコソッと喋りかけてきた。
「うん、そうみたいだね。私も久我先生から聞いた」
「カッコイイですよね、五十嵐先生〜! やる気なさそうに見えましたけど、腕も顔も男前!」
溢れんばかりの笑みを見せながら、浮ついているマリちゃん。きっとマリちゃんは五十嵐先生が本院にいる頃、何人もの執刀医を飛ばしたことを知らないのだろう。



